三菱電機や三洋電機など、太陽光発電システムメーカーの増産計画が相次いでいる。7月2日には昭和シェル石油が2011年に世界最大級の太陽光発電パネル工場を建設する計画が明らかになった。国からの補助金廃止などで一次後退した太陽光発電だが、新素材の太陽電池の開発や、他システムと組み合わせた住宅総合マネジメントシステムの研究など、注目が集まる。
★ 設置要件が少ないCO2排出量削減のため注目される太陽光発電。火力などの発電方法と比べ排気ガスなどの副産物が発生せず、建物の屋根や壁面に設置できるので用地を占有しないなど、設置に必要な要件が少ない。戸建ての屋根という限られたスペースでも売電できるほどの発電能力があるのも特徴だ。
また、太陽光を直流電力に変換する太陽電池モジュールは素材のリサイクルが可能で、シャープなどがモジュールのリユース・リサイクル技術の実用化を目指した研究開発を進めている。
★ 電池寿命は20年程度
家庭用太陽光発電システムを【図】にまとめた。
太陽光発電システムは運転に燃料費がかからず、ほかの発電方法と比べてランニングコストが少ないのが特徴だ。
また、可動部分が少なく、太陽電池モジュール部分の汚れもほとんど雨で落ちるのでメンテナンスの手間も少ない。ただ、太陽電池モジュールの寿命を10〜15年程度とするメーカーが多く、4年に一度程度定期点検を行なうのが望ましい。
住宅用太陽電池モジュールはほとんどのケースで屋根に設置する。そのため、防火地域や準防火地域の場合、屋根に取り付けられるタイプの太陽電池モジュールか確認する必要がある。三菱電機の「MYシリーズ」など、太陽電池モジュールが屋根材と一体化しているタイプは防火認定を取得しているケースがある。
★ 価格低下を見込む太陽光発電システムの設置にかかる費用は10年前と比べ約35%低下した。ここ数年は横ばいが続くが、設置費用の大きな割合を占める太陽電池の研究が進んでおり、今後さらなる価格低下を見込んでいる。
現在、太陽電池モジュールの主力はシリコン系だが、カルコパイライト系化合物を原料としたCIS系や有機色素を用いた色素増感型など、シリコンより原材料価格が抑えられる太陽電池の開発が進む。
これら新型の太陽電池は従来のシリコン系の弱点(モジュールの一部が陰になると全体の発電効率が大きく下がるなど)も克服するため、注目したい。
★ メーカーごとに特色住宅用太陽光発電システムを供給する主なメーカーはシャープ、三菱電機、三洋電機、京セラの4社。
このほかに昭和シェルソーラーやホンダソルテック(ホンダの子会社)などがある。
大手4社の代表的な製品を【表】にまとめた。
主な太陽光発電システムメーカーと製品
メ
ー
カ
ー名 |
代表的な
製品 |
太陽電池
のタイプ |
特 徴 |
発電1W あたり
のコスト |
シ
ャ
ープ |
サンビスタ |
多結晶
シリコン型 |
パワーコンデショナに昇圧機能つき接続箱が内臓されているため、太陽電池モジュールとパワーコンデショナの設置だけで済む。 台風圧性能が高く屋根の端近くまで設置できる。 |
約520円 |
| 三菱電機 |
MXシリーズ |
多結晶 シリコン型 |
電力変換効率が97.3%と高く、従来より少ないモジュール数で設置可能。MPPT制御によって日射量が少なくても高い変換効率を維持する。
積雪1.5m以下の地域まで設置可能で、塩害地域にも標準対応する。 |
約620円 |
| 三洋電機 |
HIT 太陽光発電 |
ハイブリッド型 |
モジュールの面積あたりの発電量が多く、小さな面積でも発電量を確保できる。夏の高温時でも出力を維持する。モジュール・パワーコンデショナ全機種で「エコマーク」を取得。 |
約715円 |
京セ
ラ |
SAMURAI |
ハイブリッド型 |
縦幅が短く、横の長さが異なる長短2種類のモジュールを組み合わせることにより、複雑な形状の屋根でも隙間なくおさめることができる。 パワーコンデショナはMPPT制御機能搭載。 |
約630円 |
太陽光発電システムの発電効率を表わすのには2つの変換効率を用いる。太陽電池が太陽光を直流電力に変換する際の「モジュール変換効率」と、パワーコンデショナが直流電力を家庭で使用可能な交流電流に変換する際の「電力変換効率」。大手4社の内、モジュール変換率が高いのは三洋電機、電力変換効率が高いのは三菱電機の製品だ。
京セラの製品の特徴は太陽電池モジュールのサイズ。縦幅が他社製品の半分程度で、横幅が長短2サイズあり、組み合わせて設置することで複雑な屋根形状でもぴったり納めることができる。
最大手のシャープのシステムは太陽電池モジュールとパワーコンデショナだけのシンプルな構造で、発電する1Wあたりのコストが一番安い。導入しやすいのがシャープ、屋根形状にフレキシブルに対応できるのが京セラ、少ないスペースで十分に発電したいときは同じ設置面積でもより多く発電できる三洋電機―と特徴を分類することができる。
★ システムの組み合わせ
メーカーによる新型太陽電池の開発が進む一方で、ハウスメーカーなどは太陽光発電システムを取り入れた住宅の総合マネジメントシステムの開発に取り組んでいる。
アイフルホームは太陽光発電システムと電気自動車、エコキュートなどを組み合わせた「クールアースモデル住宅」のプロジェクトを東京工業大学らと立ち上げた。
また、新日本石油は「わが家で創エネプロジェクト」を発表。高断熱高気密のモデル住宅に太陽光発電システム、HEMS(ホームエネルギー・マネジメント・システム)、燃料電池「エネファーム」、高効率石油給湯器「エコフィール」、蓄電池などを搭載し、低炭素社会に対応した住宅用総合エネルギーシステムの研究を進める。2010年度にはこのシステムを商品化する予定だ。
いずれのプロジェクトも、発電した電力を使う・発電するといった従来の太陽光発電システム活用にとどまらず、発電した電力をいかに効率よく活用し、住宅全体のエネルギーをマネジメントするかといったところに焦点が置かれている。
住宅用太陽光発電システムに対してはいまだに発電能力などに対する消費者の不安があるが、原油価格の高騰が続くなか、燃料費がかからず発電できる太陽光発電システムに対する企業の視線は熱い。